卒業した高校の前身女学校時代をお過ごしされたご婦人のお宅まで、資料づくりのためにお借りしていた当時の写真アルバムを返しに出掛けた。
もう私もこんな歳でしょ、だから散らかったままでごめんなさいね、と通されたのは、市内の住宅街にあって森のごとくわんさかと緑生い茂るお庭。ウッドデッキで椅子に腰掛け、色々お話が続いた。
よく見ると、そこらじゅうにハーブが植わっていて、どれもこれもむくむくと元気が良い。ご自身のお母様が亡くなられた時に植えたというしだれ桜もあれば、ライムの木まで植わっている。自分の裏庭の貧弱ハーブとは勢いが違うなあ、と感嘆してたら、持って帰りなさいと、根つきでバジルやミント、ローズマリー等を寄せ植えて下さった。「これはお肉と一緒にあわせなさい」「これは刻んでペーストに」と言われるままに、私はちょっとよそ見心地で考えている。なーんて、おしゃれでカッコいい90歳なんだ!
ここは昔、終戦直後にもっと街中に住んでいた頃、食料が無いからと畑として購入した場所だそうで、当時はお米や野菜を作って、なんとかしのいでおられたのだそうだ。女学生時代にも、勤労奉仕の一貫で野菜などを作っていたから、その時の経験は大いに役立だったと言う。実際にそういうお話を聞かせて頂くと、どれだけ当時の方は逞しかったのかと思うし、目の前の凛とされた、人生の大先輩を見ると、つくづく自分も頑張らないといけないなあという気持ちになる。
さて、家に帰って、このひ弱な現代人は頂いたバジルを刻んで、アンチョビのパスタをこしらえた。いやはや。ありがたい。