全国区で言えば白州正子・著「かくれ里」「山国の火祭」章で触れられている京都は花背・別所。京都市民で言えば、小中学生の野外活動で訪れる「花背山の家」がある、鞍馬のまだ先の結構な難所道のその先。
本当に小さな小さな、峠を越えて迫る山々に囲まれた集落で、唯一ある小中学校には「そやなあ、全部で30人位かな、子供達は。職員さんも、同じ位の数ちゃうか」と、おじさんが笑って言う程の花背。
そんなエリアでは毎年この時期、「別所・井戸端展」というのがやっている。今回でなんと21回目の気合いぶり。が、そうたくさんの人が知る訳でも無い。
その内容は書いて字のごとく、集落の家々の軒先、玄関口、広間、縁側が開放されて、家人らの作った、例えば栃餅とか、山椒の粉とか、ぜんざい、漬物、お野菜、藤蔓で編んだ籠・・・などが売られている。
代理店臭も、行政臭も、企業協賛臭も無し。みんなみんな、運営から売られているものまで全部手作り。固く木戸が閉ざされているかに思われがちな田舎の暮らしが、なんとも開放的に、親しげに、また無邪気に、訪れる人を出迎えてくれる。
縁あって知る人がおられるこのエリアによって、ゆっくり、じっくり、楽しんで、という生活リズムの大切さについて、少なからず自分は強く影響を受けた。だから大切な場所のひとつである。
今日は昨日からの木枯らしのせいか、ひときわ美しい空の色になって、どこもかしこも際立って、色彩がぐっと飛び込んで、なんだか悲しいのが嬉しい、みたいなクラクラした気持ちになった。以前何かで、東北の方では和菓子の色彩がよそと比べて強いのは、長い冬の無彩色の世界から逃れるためだと言われていたけれど、そうだこの花背も、もう目の前に同じ京都とは思えない程の厳しい冬と雪の世界が待ってるんだなと、だからまた秋は一層美しいんだと、思い出した。
ああ、いいの頂いた。
また来よう。必ず。