写真展タイトル「das Zenturum」について、名付けた理由を少しお話したいと思います。
ドイツ語タイトルなのですが、カタカナ表記すれば随分読みにくい。「ダス・ツウェントゥルム」。音読すると、とてもガタゴトとしていて、私にはなんとも格好が良いと思うのですが、皆さんは如何お感じになるでしょう。
当初、写真群をまとめていた頃には、別に仮タイトルのようなものがありました。日本語で浮かんだのは「核」という言葉で、それは撮影地を初めて訪れた時に直感的に見えたものでした。
「核」「中核」「物事の中心」「真髄」。
既に閉鎖され、役目を終えてしまったインフラに関わる製造拠点を指してこのタイトルとは、随分皮肉な話に思われるかもしれませんが、私にはその状況全てにこそ、重要な要素や意味合いがあるのでは無いかと考えたのです。
そこで、この核という言葉を、まずは英語に置き換えた時の音の響きとして、「コア」というのは、そう悪く無いなと感じました。けれど実際に英語の文字に落としこんだ際の「core」という字形には、被写体の持つ強さを削ぐというか、意に反してコシの無さの様なものを感じ、定冠詞の「the」を付けた所で、印象は全く変わらないと感じました。
そのまま随分、写真群は名も無きままに時間が経過しました。
撮影地であるセメント工場の歴史を振り返る中で、この工場が最も生産力を上げた頃にはドイツ製最新式の設備が導入されていた事を知りました。ものづくりの国ドイツ。無骨さ。機能美。コンセプトの中で対峙したドイツ哲学のくだり。考えれば最初の私の写真展を行った際に名付けたのもドイツ語タイトル。
そこで、友人であるドイツ文学博士に相談しました。当初の「core」を、ドイツ語で直訳すれば「Kern」となるが、私の言わんとする事をタイトルにするなら、それは違うだろう、との事でした。そして最も近い表現をするならばと言う事で、今回のタイトルとなった訳です。
ちなみに英語の定冠詞「the」は、ドイツ語には男性名詞、女性名詞、加えて中性名詞があり、それぞれに名詞の性が男性であれば「der」、女性であれば「die」、中性であれば「das」となります。
このようにドイツ語には3つの性があるという事も、私にはとても、興味が持てた次第です。
写真展開催まで、折々にまた、写真展にまつわるお話等を投稿してゆきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いいたします。