先週末、石川県へ。
諸々の用事を済ませて、帰りに小松に立ち寄る。
小松には個人的に訪れたい所がいくつもあって、温泉に、九谷焼やその他伝統工芸の諸々の施設もそうだが、例えば、能登杜氏レジェンドによる日本酒蔵「農口尚彦研究所」や、廃校小学校がリノベされてオーベルジュに生まれ変わった「eaufeu(オーフ)」など、好奇心のまま、いずれもサラッと訪ねる、と言う訳にいかない内容の濃い場所がたくさん(果物系スイーツが得意なお店も、笑)。ので、順番にこれから少しづつでも消化して行けたら良いなあ、と思っている。
と言う訳で。そんな、石川県小松市は日用町(ひようまち)。
山手を進んだところに「苔の里」と称される、日用神社の周辺一帯に苔と日用杉、立派な古民家でまとまった里山集落がある。
現在ここでは7世帯が暮らしておられ、住民の皆さんによって設立された里整備推進協議会を中心に、その景観を守りながら自然と共生する日本古来の生活文化を継承しておられるそうだ。
また、私有地の一部は開放されて一般にも散策出来る様になっており、48種の蘚苔類と杉木立に囲まれた美しい光景を、住民で無い我々も堪能する事が出来る。
なんと言うか、普段苔むす。。。と言えば京都で言うならお寺や料亭の庭で、と言うところになるだろうけれど、「苔の里」では(勿論神社も含まれては居るものの)いわゆる作為的聖域、と言う感じが絶妙に無い。山々の緑を通り抜けた先に現れる、さらに濃厚な緑の一帯には、人々によって守られてはいるけど、自然に逆らわない、それこそ自然の発する圧倒的な聖域感、みたいなものが漂っている。
加えて、空高く伸びる杉たちに、地面を這う苔たちの間には風の通りがあって、閉塞感も無い。
平成28年の歌会始の儀にて、眞子内親王殿下が前年この地に公務で立ち寄られた思い出を振り返って、
「広がりし 苔の緑のやはらかく 人々のこめし 思ひ伝はる」
と、詠まれたそうだ。
本当に、これは素直な感想で、素直過ぎて一見簡単に思われるかも知れないが、これ以上この地に対して言い当てられた歌は無いだろうと、訪れた皆さんもきっとお思いになるだろう。なんともじわじわ深く染み入ってくる。と言う訳で、もうあんまり下手な長々話はやめて、その魅力が伝わるかも頼りない事だが、現地の写真をいくつか挙げてみようと思う。